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「都の計画に賛同広がる」

石原慎太郎東京都知事が米ワシントンで打ち出した尖閣諸島の購入計画は、時宜を得た強烈なメッセージとして、日本政府をはじめ世界に向けて発信された。既に約10億円もの寄付金が都庁に寄せられているように、「国土を守る」という一念が国民に領土とは何かと考えさせる契機になったことを大いに歓迎したい。石原氏と地権者との橋渡し役を秘密裏に務めた私もまずはホッとしているところだ。

地権者と知事を橋渡し

私と地権者の男性(70)は、青年会議所活動などを通じて30年来、家族ぐるみの付き合いがある。彼は、前地権者の古賀善次氏から「あなたなら変な人物に島を売らないだろう」と信頼されて尖閣を譲り受けたそうだ。
 一昨年9月、尖閣沖で起きた中国漁船衝突事件以降、男性から「国を守るため長い間個人で所有してきた。私も70に手が届くし、将来を考えるといろいろと限界がある。国に買い上げてもらいたいが、民主党政権は外交センスがなく心もとない。今まで多くの政治家に会った中で長年の友人のあなたに任せる」と相談を受けた。私も「このままでは国益を損なう」と、一計を講じた。当初、ひと坪運動のような形で全校から寄付を集めようと考え、親しい間柄の石原氏にも賛同を得ていた。
 しかし、昨年3月に東日本大震災が発生。震災復興に向けた募金と重複する懸念もあり、振り出しに戻った。そんな折に男性から「かねて石原さんの信念や行動は、自分の考えと一致する」と聞き、昨年9月1日に石原氏を男性に引き合わせたのだ。
 実はこの2人は初対面ではなかった。石原氏が青嵐会に所属していた70年代に地権者の家を訪れ、先ごろ亡くなった男性の母親に「尖閣を売ってほしい」と申し入れて断られた経緯があった。その時は男性も同席していた。今回、石原氏が「お母さんに線香を上げに行く」ことで久方ぶりの対面が実現し、2人は意気投合。「ぜひ売ってほしい」「首都の知事なら、こちらの思いもそんたくしてくれるだろう」と話が一気に進んだ。その後も3人で会食するなどして機が熟するのを待った。
 今年4月、石原氏が米国の影響力ある保守系シンクタンク・ヘリテージ財団で講演することになった。「日米、日中関係について話す。その場で都が尖閣諸島を購入する計画をぜひ表明したい」。訪米直前に石原氏の考えを男性に伝え、快諾してもらった。

事なかれ主義外交では

近年、中国が尖閣周辺海域で行動を活発化させ、領有権を強く主張している。一方、日本外交には「事なかれ主義」がはびこっているのではないか。今年は日中国交正常化40年の節目で「祝賀ムード」も漂う。だが中国が今秋次期指導部体制になれば、来年以降は余談を許さないだろう。
 私が32歳の時に政界入りしたのは、日中友好の井戸を掘った田中角栄首相に「これからの日本には正論を主張できる女性政治家が必要」と声を掛けられたのがきっかけだ。折に触れて元首相は「中国は大事だけれども、言うべきことは言わんといかん」と話しておられた。私も議員外交で中国要人と会う時には、その考えを実践するよう努めている。石原発言を受け、野田政権は「国有化」も選択肢に入れ始めた。しかし、事は国家主権に関わる問題だ。他の政策もしかり。このまま「何も決められない政治」が続くことは決して許されない。

【聞き手・中澤雄大】

山東昭子(前参議院副議長)
(※2012年5月27日 毎日新聞「論点」より抜粋)

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