関連記事

 
 

「尖閣購入」仕掛人は私です

いかにも石原都知事らしい

石原慎太郎東京都知事がワシントン市内で講演し、「尖閣諸島購入構想」を明らかにしたことは、日本だけでなく、世界に対して大きなインパクトを与えました。
 日本政府に強烈なメッセージとして伝わるよう、ワシントン出張に合わせてごく一部の人間だけで極秘裏に進めてきたわけですが、いかにも石原知事らしい実に上手いタイミングだったと思います。
 私はこの発言を「都が所有することで島を守る、国土を守ることを示した」と歓迎します。国民に改めて国土とは何か、領土とは何かを考えさせるきっかけにもなったのではないでしょうか。
 都庁には「尖閣購入」に関する国民からの意見が、発言翌日の午前中だけで百件ほどあり、その多くは「決断に感激した」「国が動かないなか、よくぞ言った」など、石原知事の方針を支持する声が多く届いていると聞いております。
 石原知事と地権者の男性との橋渡しをした私の事務所も、朝から電話が鳴りっぱなし。本当に数多くの賛同の声をいただいております。  私と地権者の男性とは、青年会議所の活動を通じて30年来の親交があり、彼の母親が90歳を過ぎた時、私が理事を務める「元気な120歳を創る会」で表彰するなど、家族ぐるみの付き合いを続けてきました。
 その男性から尖閣諸島について、「長い間、国を守るために所有し続けてきたが、個人でまもっていくのは限界がある」「政府に買い上げてもらいたいが、いまの民主党政権は国を守る意識も外交センスもなく、信用できない」などとお聞きしたのです。2011年はじめのことでした。
 きっかけは、2010年9月に起こった中国漁船衝突事件に対する民主党政権の対応に、男性が不満や不安を覚えたことが大きかったと思います。
 「これまでいろいろな人が尖閣諸島の購入を申し込んできたけれど、その人の背景が見えないから、とても恐くて会えなかった。政治家もいろいろな人が接触をしてきたけれど、ほとんど会っていない。山東さんは昔からの友人で信頼しているから、あなたに任せるよ」  そう言われたのです。
 当初、私は国民運動として募金を集めようと思っていました。石原知事にも賛同してもらったのです。ところが、東日本大震災の影響から、震災の募金活動と重複してしまうことは必ずしも適切ではない、と判断し、計画は中断してしまいました。
 そんな折、男性から「かねてより石原知事に魅力を感じ、本も読んでいる。彼の考えは自分の考え方と一致する」との話を伺い、昨年の9月に石原知事を紹介したのです。
 石原知事は都知事になる以前にも、男性の母親に尖閣諸島を譲ってほしいと申し入れをしたことがあったそうです。その母親が亡くなったということで、お線香をあげに行くということになりました。
 男性とも初対面ではなく、知事と二人で地権者の自宅を訪れた際は、昔話に花を咲かせていました。
 そして、その場で石原知事が「東京都が買います」と提案し、男性からは「機が熟せばお願いします。男と男の約束です」と言って知事と固い握手を交わすなど、前向きな姿勢を示しました。
 それ以降も私が仲介役を担い、2,3回面会し、度重なる電話でのやり取りを通じて、最終的に男性が知事の渡米直前に「石原さんなら任せられる。腹は固まった」と売却を決意し、石原知事に伝えていたのです。
 知事の帰国(4月19日)後には、土地の購入に向けて具体的に話が進展していくことでしょう。東京都が購入したあとは、尖閣諸島が所在する沖縄県や同県石垣市との共同所有も検討しているなど、様々な事案についても協議に入ると思われます。石垣市の中山義隆市長も、市民から募金することを考えているようです。

中国の加熱する“侵略行為”

地権者の男性の決意を後押ししたものは、先述したように、民主党政権による「国を守る意識の欠如」が挙げられます。  他方で、尖閣諸島の周辺海域での巡視活動を常態化させ、その目的を「日本の実効支配の打破」と公言して憚らない中国に対する危機感の表れでもあると思われます。
 10年9月の中国漁船衝突事件以降、中国の漁業監視船がほぼ一ヶ月に一度のペースで尖閣諸島沖の水域に侵入しており、今年3月には最新鋭の海洋調査・監視船が領海内に侵入するなど、中国側が尖閣諸島の領有権を主張する行動を続け、日本の海上保安庁の警告に対し、「この海は中国領だ。我々は正当な業務を行っている」と毎回、反論してきます。
 さらに1月には、共産党の機関紙「人民日報」に、はじめて尖閣諸島を「核心的利益」と表現しました。すなわち、「台湾、チベット自治区、新疆ウイグル自治区」と同じ「安全保障上、譲れない国家利益」と位置づけたのです。
 このような中国の加熱する“侵略行為”に対して、これまで民主党は事なかれ主義でやり過ごしてきました。尖閣諸島以外の竹島や北方領土などの現状を見ても、その弊害が如実に表れています。
 領土や主権にかかわる問題に毅然とした姿勢をとれない国は、他国から信用・信頼されません。尖閣諸島は日本固有の領土なのです。中国が何を騒ぐかという感じです。
 石原知事も演説で東シナ海への中国の進出の動きに触れ、「日本の実効支配をぶっ壊すため、過激な運動をやりはじめた。本当は国が買い上げたらいいが、国が買い上げようとしないからだ」と説明し、「東京が尖閣を守る」と強調しています。
 案の定、今回の報道を受けて、中国外務省の劉為民報道官は「違法かつ無効で、釣魚島が中国に帰属するという事実は変えられない」などとする談話を発表し、18日付の中国各紙は、中国外務省がこの談話を中心に一斉報道しました。
 中国国内のインターネット上では、「中国政府は日本を購入せよ」「釣魚島を中国の射撃訓練場にすれば、本当に中国固有の領土になる」といった、過激ともナンセンスとも言える意見に支持が集まっていますが、ここで日本側が引いてはなりません。断固毅然とした態度を示すべきです。

「石原構想」が契機に

野田佳彦首相は衆院予算委員会で、沖縄県の尖閣諸島のうち、個人が所有している島を国が買い取る可能性を問われ、「尖閣がわが国固有の領土であることは、国際法上も歴史的に見ても明々白々だ。所有者の意識も確認するなかで、あらゆる検討をしたい」と述べ、国有化も選択肢に検討しました。
 また、藤村修官房長官も記者会見で、尖閣諸島の一部の国有化の是非について「いまは(国が)お借りしているが、必要ならそういう発想のもとに前に進めることも十分にある」と述べ、政府が今後、買い上げを検討する可能性に言及しました。
 しかし、どちらも遅きに失した感は否めません。
 中国を刺激するのを避けたいため実効支配の強化に十分な対策をとらず、「何がなんでも尖閣を守る」という気概や姿勢を示してこなかった民主党政権が、何をいまさらという感じがします。おそらく、国民の信用も得られないのではないでしょうか。
 それに民主党は、この他の件でも党内の意見がほとんどまとまっていません。この件も結局は、違った見解になる可能性もあります。政府の発言に信頼性がないのです。
 繰り返しますが、地権者の男性も「政府に買い上げてもらいたいが、いまの政府は信用できない」と、はっきり言い切っています。
 民主党政権になってから、総理大臣から「国を守る」という言葉を聞いたことがありません。民主党政権下では、尖閣諸島は中国領になりかねないのです。
 今回の件を受けて、日本国内では「中国に弱みを見せないため、日本の領土として主張しておくべきだ。日本の外交が頼りないので、税金を使うこともやむを得ない」との極めて真っ当な賛成意見がある一方で、「日本と中国では言い分が違う問題。お金で解決しようとするとややこしくなるのではないか。都民が買いたいと言っているわけでもないのに、石原氏個人がやりたいことに税金を使うのは納得いかない」といった的外れな批判も見られました。
 領土問題は国家主権にかかわるのです。「石原構想」が契機となって、尖閣諸島をはじめとした領土問題に対する国民の意識の高まりを期待します。

山東昭子(前参議院副議長)
(※月刊WILL 2012年6月号より抜粋)

月刊WILL 2012年6月号

  • 自民党|Lib Dems
  • 参議院

PAGE TOP